0、心理学で読み解くアニメの世界

          心理学で読み解くアニメの世界

 

~小さな勉強会~

 

2014年3月21日、神奈川県逗子市で最初の心理学勉強会を企画してから、今年で6年目となりました。多いときは年に5~6回、最近では年4回ぐらいのペースで行っています。当初は、カウンセリングを学んだ仲間たちと、お互いのレベルアップのために企画していましたが、最近では、心理学に興味、関心を持っている様々な方たちも、参加していただけるようになってきました。

 

以前は、教科書的なテキストなどを参照し、理論や技法を積極的に学んできましたが、ある時から、アニメ世界の主人公達の心理的な渦(元型)を、参加者と共に語り合ってゆくようなスタイルを採用しています。

 

これは、かつて私自身が受けた講座の影響なのですが…。その講座は、私が期待したような内容とはかなり違っていたのですが、しかしアニメの中に心理的「渦」を見つけていこうとするアイデアは面白かったので「どうしたらもっと深い内容にできるか」をいろいろ考えるようになり、自分なりに少しずつ進め方を変えてきたところです。

 

初めの頃は、ファシリテーター(私)としてのはっきりとした考えを示すことはあまりしなかったのですが、現在はむしろ、「私がどのように観たのか」を明確にお示しする方が、話がスムーズに進むようなので、「私の見方」をレジュメ(ちょっとした資料)にして、みなさんにお渡しするようになっています。

 

かつて受講した講座もこの勉強会も、基本的には「登場人物の心の奥にある心理的課題(元型)を読み取り、その生き方なり考え方の中から、観察者としての“自分”をより深く理解し、学ぶことによって、人間的な幅をより広げていこう」という点において、コンセプトは同じと考えています。

 

 

~アニメ作品を読む~

 

かつて人々は、神話や民話などを通して、人生の歩み方や道徳的価値観を醸成してきました。しかし現代社会では、新しい技術や思いもよらない価値観が、とてつもないスピードで勃興し、ついて行くことが難しい程です。

 

しかし惑わされず良く見つめていると、その根底には、元型といわれているような葛藤が見え隠れしているように感じます。一見すると、とても新しい価値観のように見えるものでも、良く見ると誰もが思い悩むような普遍的課題が透けて見えるのです。

 

さて、学ぶ対象が「アニメである」という点に違和感を持つ人は、あまりいないでしょう。今やアニメは、多くの人たちに認められた文芸、映像作品の一つのジャンルです。新しい技術、新しい感性のクリエーターたちがしのぎを削って、多くの作品を生み出しています。

 

しかし、どんなに斬新な作品であっても、人間が創っている限り、そこには人類が共通に持っている葛藤(渦)が存在しています。自由な発想、自由な表現であればある程、その作家の無意識が色濃く現れてくるものでもあります。

 

探偵になったつもりで、その葛藤や無意識を探求することは、時として作家の痛みに触れたりもするけれど、そのことに「気づくこと」が、作家の表現を受けとめることでもあるのだと感じます。

 

 

~テレワーク(リモートスタディ)~

 

直近では去年12月と今年の3月に勉強会を予定していたのですが、去年はみなさん忙しく、3月は新型コロナウィルスの影響によって中止にしました。(2020年はいろいろな意味において忘れられない年となりましたね。)

 

感染予防の観点から、多くの企業や学校などで、テレワークが話題となりました。移動することなく意思疎通するためには、テレワークは極めて重要だと思います。日本では、テレワークがあまり効率よく実施されていないようですが、今後様々な分野で、活発に取り上げられることでしょう。

 

かく言う私も、当初勉強会の再開を「一年ぐらい後になるかな~」と思っていましたが、ちょっと見方を変えれば、テレワークのようなことができるのではないかと考えるようになりました。

 

例えば、みなさんにお渡しするレジュメをブログに掲載し、観ていただきたいアニメ作品を後ほどお知らせすることで、今までの勉強会とは違った形にはなってしまうけれども、出来ないことも無いなぁ…、などと。

 

吹けば飛ぶような小さな勉強会ではあるけれども、楽しみにしていただいている方たちもいらっしゃるので、取りあえずやってみようかなぁ…、そんな思いから、しばらく放置していたこのブログを復活させることにしました。今後このブログは、勉強会資料(レジュメ)を掲載する場にしていきたいと思います。

 

先ずは、今取り組んでいるちょっと大型の企画がありますので、まとめ作業が終わったら、少しずつアップロードしてゆくつもりです。いつもは「劇場公開のアニメ作品」を対象としているのですが、今回はTV放映作品(全13話)を取り上げる予定です。たまたまこのブログに遭遇した方、よろしければしばらくお付き合いくださいませ。

 

 

~取り上げた作品たち~

 

アニメ作品のレジュメを書くとき、ストーリーをすべて詳細に追っていきます。従って、まだ作品をご覧になっていない方々にとっては、「先にエンディングまで知ってしまう」事になりますので、その点は十分気を付けてください。興味のある作品、あるいは、まだ観たことの無い作品などは、どうぞ機会を見つけて、このブログより先にご覧になっていただきたいと思います。

 

今まで取り上げた作品(レジュメをアップできそうな作品)は今のところ6作品ありますので、ここに作品名を挙げておきます。

 

  君の名は           新海誠監督作品

  言の葉の庭          新海誠監督作品

  千年女優           今敏監督作品

  聲の形            山田尚子監督作品

 

  東京ゴッドファーザーズ    今敏監督作品

  カラフル           原恵一監督作品

 

但し、「東京ゴッドファーザーズ」と「カラフル」は、会場での勉強会を終わらせた後でアップしたいので、一年後ぐらいになるかと思います。

 

勉強会でアニメ作品を観始めたのは、宮崎駿の作品群からなのですが、最初の頃はレジュメを書くことはせず、メモ程度の資料をもとに進めておりました。従って、宮崎アニメに関してはアップするほどの資料はありません。いずれ、宮崎アニメ(宮崎駿原作の作品群)を再検討してみたいと思っていますが、取り組みたい作品群(新作を含めて)がかなりありますので、先ずはそちらを優先していきたいと思っています。

 

 

~心理学で読むということ~

 

さて、このブログでは「渦(うず)」や「葛藤」、「元型」といった言葉を多く使用しています。深層心理学において用いられる傾向が強い言葉たちです。特に「元型」はユング心理学に特有の考え方ではありますが、それらについて今ここで詳細に記述することはいたしません。むしろお読みいただいて、全体の中からどのような意味合いなのかをトータルで感じてもらう方が良いのではないかと思っています。この先、どこかで詳細にお話しすることがあると思いますので、そのあたりでご確認ください。

 

ここで紹介するアニメ作品について、いろいろな事を書いてゆくつもりです。しかしそれは筆者が感じている事であって、正解があるわけではありません。以前の勉強会で、あるキャラクターについて「私は~~ような性格を感じる」と言ったところ、ある参加者から<真逆の意見>をいただいたことがあります。人は本当に様々な見方を持っているものだな~と、とても面白い経験をしたことがあります。

 

心理学は“人間探求の学問”だと思います。かつては哲学の領域にあったものが、科学的な技術や思考方法を獲得しながら、今のような心理学体系を構築してきました。しかしその目的、すなわち“人間探求の姿勢”は今も変わっていないように思います。

 

人間を知ろうとするとき、避けて通ることのできないことの一つが、自分を知ることではないでしょうか。このブログが、自分を知るための一助になるのでしたら、それは私にとってこの上ない幸せです。どうぞみなさんの毎日が、豊かで実り多いことを心よりお祈り申し上げます。

 

 

では次回からレジュメをアップしていきます。