12、心理学で読み解くアニメの世界

          ユング心理学で読むアニメの世界

           「色づく世界の明日から」

 

第十二話 光る光る この一日が光る

 

一、文化祭(南輝祭)

 

夜、公園のベンチにユイトとヒトミが座っている。ユイトは左に座っているヒトミの手を握り締める。ヒトミが驚いてユイトを見つめると、ユイトは「また消えるの、心配だから」するとヒトミはしばらくして、絞り出すように「私、帰りたくない」と答える。

 

「ごめんなさい」

「なんで、謝るの」

「もしも私が魔法使いじゃなかったら、こんなことに…」

「そしたら、会えなかったよ…、俺は、ヒトミが魔法使いで良かった」

ヒトミはもう片方の手を添えてユイトの手を握り返す。

 

ヒトミのモノローグ:残された時間は少ない、でも、ちゃんと見つけたい、私が、ここに来た意味を

 

部室で、みんなに心配かけたことを謝るヒトミ。「心配かけて、ごめんなさい、まだ、気持ちの整理は、ついていないんですけど、文化祭の二日間は、みんなと過ごしたいと思っています」

 

アサギがヒトミの手を取り「ヒトミちゃん、私たちも、みんな同じ気持ちですよ」と言うと、みんな楽しもうという雰囲気になる。するとクルミは、自分でデザインした魔法写真美術部のTシャツをヒトミに渡す。このダサさがいいらしい。

 

文化祭が始まり、魔法写真美術部の面々は忙しく活動している。アサギは思い切って来場者にポストカードを勧めると「かわいい」と言って購入してもらう。嬉しくなり「ショウ君、売れました、ポストカード、あ~、嬉しい、あたしの写真、ちゃんと喜んでくれる人がいるんだ」とショウに報告すると「良かったな、アサギ」と言ってショウも喜ぶ。

 

ヒトミとコハクはマジカルアートイリュージョンを実施している。

「ヒトミ、魔法がうまくなったね」

「そうかな」

「そうだよ、こっちに来たばっかりの頃は、何にもできなかったじゃん」

「確かにそうだった」

 

「練習した成果があったね~、やっぱり才能あるよ、ヒトミは」

「こっちに来るまでは、魔法を使うこと、ほとんど無かったから、コハクに褒められるくらいなんだから、少し自信もっていいかな」

「いい、いい、未来の大魔法使いが太鼓判を押しちゃうよ、さすが私のお孫ちゃん」

 

マジカルアートイリュージョンの合間、体験者の女の子二人がユイトに駆け寄り話しかける。「私たち、絵の中に入ってたんですけど、あれ、先輩が描いたって聞いて…」感激した二人はユイトにサインをもらい「これからも応援してますから」と言って去っていく。ユイトは驚きながらも喜ぶ。

 

すると、そこへ朝川先輩(サナミ)が差し入れを持ってユイトを尋ねてくる。「たくさんの人に喜んでもらうのって、やっぱり嬉しいです」「誰かのために描くことも、すごくいいことだと思うよ、これから君の絵に、いい影響を与えてくれるんじゃないかな」ユイトは小さなヒトミと一緒に絵を描いたことを思い出す。

 

『誰かのため』

 

クルミのお姉さん、ユイトのおかあさん、アサギのお父さんなど、いろんな人がやってきて、文化祭初日は大成功に終わる。差し入れのドーナッツをみんなで食べていると、チグサが記念写真を撮ろうと提案する。

 

変なポーズの記念写真を撮り、ヒトミが笑いながら「うふふ、みんなおかしい、明日も頑張りましょう!」と言うと、一同ヒトミをじっと見つめ返す。しばらくして、みんなが「頑張りましょう」と笑いながら応じる。

 

帰り道、コハクがヒトミの手を握ると「どうしたの、コハク」とヒトミが返す。「いいでしょ、たまには手、繋いでみたくなっちゃっただけ」するとヒトミは「変なの」と笑顔で応じる。

 

コハクのモノローグ:お願い、魔法の神さま、もう少しだけ、もう少しだけ、ヒトミを消さないで

 

夜の月白家では豪華な食事が用意されている。コハクが「なっ、何のお祝い?」と尋ねると、ヒトミと食事のできる最後の夜だという事らしい。ヒトミはお世話になってありがとうございますと伝えると、お父さんが、これぐらい当たり前だよとヒトミに答える。

 

みんなで食事を始めようとすると玄関の呼び鈴が鳴る。コハクは玄関先で古書店の店主から星砂時計を受け取り、後からやってきたヒトミに店主を紹介する。一瞬ヒトミの顔がぼーっとするが「いい旅を」のあいさつに「はい」と答える。

※一柳さんらしき人が十三話で一瞬登場する。要確認。

 

ユイトは自室で「今、俺にできること」そんなことを考えながら絵を描いている。一方、ヒトミは自分の部屋を見回し、思いでの品々に視線を送るが、まだ、心の整理ができないでいる。

 

翌日、マジカルアートイリュージョンには長い行列ができ、一日中忙しくなりそうな気配が感じられて、ヒトミとコハク、そして部員たちにも気合が入る。

 

二日目の文化祭も忙しく時間が過ぎていく。それぞれが熱心に活動している中、先生から、他の部活動の記録写真撮影の依頼が入る。ショウとアサギは記録のために校内撮影に出かけるが、ちょっとした空き時間に、アサギは思っていたことをショウに提案する。

 

「ヒトミちゃんとユイト先輩に、少しだけでも、文化祭、廻ってもらいたいなって、余計なお世話かもしれないけど、ショウ君が嫌なら、止めます」

「えっ、あ~、いや、いいんじゃない」

「ありがとう、じゃ、わたしから、後で伝えておきますね」

 

「知ってたんだな、悪かったな、気を使わせて」

「誰かを好きになって、悪いなんてことないです、ちゃんと伝えたショウ君のこと、尊敬します、いつか私も、自分に自信を持てるようになったら…、それじゃ、私、部室に戻りますね」

 

アサギに「いってらっしゃい」と追い出されるユイトとヒトミ。ショウはチグサから、当たって砕けた先輩、好きですと言われ、アサギとクルミは、思い出は宝物みたい、な話をしている。ユイトとヒトミはお化け屋敷のイベントに誘われ、中に入ることになる。

 

ヒトミのモノローグ:話したかった、あの日からずっと、大切な人、明日から、遠くなる

 

「他も見てく?」

ヒトミは首を振る。

「楽しかったから」

 

「そっか」

「戻らなくちゃ」

ユイトは小さく「あっ」と言いかけるが、その一言が伝えられない。

 

予定より早く二人は帰ってくる。

文化祭におばあちゃん、お母さんとお父さんも来場する。

 

 

二、後夜祭

 

南輝祭終了の校内アナウンスと共に、校庭に人々が集まってくる。屋上に集まった魔法写真美術部の面々。コハクは最後のサプライズとして、打ち上げ用の魔法花火があるという。コハクとヒトミが魔法をかけると夜空に大きな花火が昇っていく。「咲き誇れ!」花火が大輪の花を咲かせる。

 

「ヒトミ、お疲れ、イベント大成功、ヒトミにお願いして良かった」コハクが言うと「ううん、みんなの役に立てて、すごくうれしかった」とヒトミは答える。みんなは、忙しかったけど面白かったことを伝えると、ショウが「ホント、二人の魔法のおかげ」と言う。

 

それを聞いて、ヒトミは嬉しくなり何かがこみ上げてくる。「どうしたんですか、ヒトミちゃん」アサギが尋ねると。「ううん、何でもない…、ドキドキするの、嬉しくて暖かい、懐かしい気持ち」

 

「それって、幸せ、なんじゃない」

コハクの言葉「幸せ」を聞いてヒトミはハッとする。空を見上げると、花火が色鮮やかに見え始める。みんなが見ているのと同じような、色のある花火が見えていることを感じて、ヒトミは涙が溢れだす。

 

「嬉しい、嬉しい、嬉しいの、花火を、みんなと、みんなと一緒に見られて」

 

ヒトミのモノローグ:みんなと一緒に見た花火は、小さいころに、母と見た花火よりも、ずっとずっと、きれいに思えた…、ありがとう、みんな

 

「60年後のコハクが魔法をかけてくれたお祭りの夜も、新月だったの」

ふと気がつくと、ヒトミは再び色を失っている。「未来に帰るのが、ちょっと心配」すると「ごめんね、ヒトミ」とコハクが返す。

「ううん」

 

ヒトミのモノローグ:違う、私が帰りたくない本当に理由は…

 

 

三、時間魔法の儀式

 

公園の小さなステージの上で、コハクはヒトミの時間魔法の儀式を行なう。

「これから、時間魔法の儀式を始めます、みんなも協力してくれる」

「もちろん、ヒトミちゃんのためなら」

「なんでも言ってくれ」

「ヒトミ、心の準備はいい?」

 

ヒトミのモノローグ:心残りがあるとしたら、それは一つだけ、いつまでも消えない、恋という花火

 

 

第十二話まとめ

 

第十二話では文化祭がメインイベントとして取り上げられているが、この中で一番印象深いのは後夜祭の打ち上げ花火の場面だろう。校舎の屋上でコハクとヒトミが魔法花火を打ち上げると、後夜祭イベントはクライマックスを迎える。

 

ショウからの「ホント、二人の魔法のおかげ」という言葉に、ヒトミは自分の魔法が認められたことを実感し心から喜びに浸る。「ドキドキするの、嬉しくて暖かい、懐かしい気持ち」という感情をうまく伝えられないヒトミに「それって、幸せ、なんじゃない」とコハクが応じると、ヒトミはハッと気がつく。

 

何かを決断するとき、内面からの強い意志があればあるほど、その決断は強力となり、永続性を保つことができるだろう。ヒトミが行った幼児決断もそれだけ強かったといえるし、それを覆すには更なる強い動機と強い意志が必要である。

 

「ちゃんと見つけたい、私が、ここに来た意味を」(モノローグ)と願っているように、ヒトミはその意味をはっきりと受け止め、理解したいのである。そうすることで初めて一歩が踏み出せると、彼女はそう信じている。

 

“ドキドキ”や“暖かい気持ち”から“幸せ”という感情や記憶がよみがえり、一瞬だけヒトミは色を取り戻す。幸せを感じることの喜びの中でヒトミは“ここに来た意味”をつかみかけている。

 

ユイトも同じように、この魔法イベントで何かをつかみかけている。絵の中の世界を体験した女子学生二名からサインを求められて「応援しています」と言われたり、サナミから「誰かのために描くことも、すごくいいことだと思うよ、これから君の絵に、いい影響を与えてくれるんじゃないかな」と言われて、気持ちが大きく動き始めている。

 

お化け屋敷から出て、ユイトはヒトミに何かを伝えようとしていたが、まだその場では声に出せなかった。しかしユイトにとっての“その時”も近づいているように見える。

 

 

さて、ここで魔法によって過去へ戻ることについて考えたみたい。私たちが本当に魔法を使って過去にタイムトラベルできるのなら、この物語は一つの真実となりうるかもしれないが、今現在それは不可能である。魔法で過去へ遡るという現象を、どのような“象徴”として捉えることができるだろうか。

 

今まで述べてきたように、この物語の“魔法”の持つ意味は、その人にとっての出自又はその家系にとっての血脈といえる。代々受け継がれてきた能力、性質又は宿命と言い換えることもできるだろう。その力を我が物として使いこなすことが、ここでいう魔法の意味ではないだろうか。別な言い方をすれば“ありのままの自分であり続ける能力”ということかもしれない。

 

しかし、どんなに優れた魔法(能力)であっても、持っているだけで使いこなせるわけではない。訓練無くしてその特性を伸ばすことは困難だろう。劇中コハクは魔法古書店に通い、大量の本を借りたり、お母さんから魔法についての知識を習得している。

 

コハクが初めて登場するシーンは、イギリスからの魔法留学を終えて帰国するところだったが、この場面は、コハクが魔法をとても大切なものと考えている証でもある。コハクは魔法を使えることに感謝し、その能力を最大限に引き出したいと考えている。

 

では、コハクはどのようにして魔法と関わってきたのであろうか。コハクが行ってきた方法はただ一つ「学習」(知ること)だ。文献をあたり、経験者から学び、遠方の識者から教えを乞うなど、コハクは熱心に魔法を学んでいる。

 

過去に遡ることは、ありきたりではあるが、歴史を知ることであり、過去の知恵、何世代にも渡って培われた膨大な知識や感性に触れることでもある。絵画や彫刻、音楽や文芸などは、そういった意味では“魔法”を誘発する一種の“触媒”のような役割があるといえるかもしれない。

 

イメージを膨らませることによって、“本物の魔法”を使わなくとも、案外多くの人達は過去への旅を楽しんでいるのではないだろうか。魔法は思ったより身近な現象なのかもしれない。

 

 

 


Irozuku Sakai no Ashita Kara episode 12 English sub

 

 

 

ところで、第十二話の冒頭、公園で二人が話をしている場面から始まっているが、第十一話の終わりに、公園の場面につながるプロセスが描かれているのでお伝えしておきたい。

 

…夜、ヒトミは紙飛行機に魔法をかけ、ユイトの部屋に向けて飛ばす。紙飛行機がユイトの部屋まで届くと、お互いに部屋の明かりを点滅させて気持ちを伝えあう。

 

今度は紙飛行機にメッセージを書き込み、再びユイトの部屋に向けて飛ばすが、紙飛行機は途中で向きを変えてしまう。ヒトミは紙飛行機の後を追いかける。ユイトも光る紙飛行機を追いかけて走ってくる。

 

走るユイトの額に紙飛行機があたってその場に落ちる。ユイトは立ち止まって紙飛行機を拾い上げる。走ってくるヒトミは、そのままユイトの胸の中に飛び込む…。

 

ドラマチックなシーンだが、この動画ではカットされているので、この回だけ、他の動画をここで張りつけておくので、最後の部分を確認して欲しい。

 ※約18分ぐらいから


HỌC TIẾNG NHẬT QUA PHIM ANIME ( 色づく世界の明日から ) TẬP 11 / 13