34、心理学で読み解くアニメの世界
ユング心理学で読むアニメの世界
編集後記
今回も13回に渡って「宇宙よりも遠い場所」を見てきました。みなさんはどのような感想をお持ちになったでしょうか。1∔13∔本投稿にお付き合いくださいまして本当にありがとうございました。
本編の中でもお話ししてきたように、とても軽快で楽しい物語ですが、その根底に流れている旅の目的は、実はとても重いものがあります。小淵沢報瀬にとってこの旅は、母の死を受け入れ、その事実に向き合い、悲しみを味わうための“喪の仕事”の完成、あるいは完成に向けての最初の通過儀式だったといえるでしょう。
一回の弔いで、シラセの心が晴れるわけではないのでしょうが、この最初のハードルを越えることで、ようやく彼女は前を向いて歩くことができるようになりました。この後、繰り返し繰り返し、自身の心に向かい合うことになるのでしょう。
最後の旅の途中、激しくブリザードが吹き荒れる夜に、雪上車の中でシラセが眠ろうとしている場面があります。そこでシラセは、ギンと貴子が楽しそうに笑っている幻影を見ます。シラセがギンを心から許すことができた、あるいはギンへのわだかまりが消えた瞬間といえるかもしれません。
そうした伏線があるからこそ、カナエに「隊長のこと、よろしくお願いします」と伝え、母のパソコンをギンに託すことができるようになったのではないでしょうか。これも『喪の仕事』の一つだと思うのですが、みなさんはどのように感じられましたでしょうか。
最後に、この一連の原稿を書いている途中の2020年9月7日の朝、以下のようなニュースに接したのでここに記しておきます。
**********
『死生学を広めた司祭のデーケンさん死去 共同通信社 2020/09/06 21:28
日本に死生学の概念を広げたカトリック司祭で、上智大名誉教授のアルフォンス・デーケンさんが6日午前3時、肺炎のため東京都練馬区の修道院で死去した。88歳。ドイツ生まれ。』
**********
著名人の訃報を知らせる短いものなのですが、筆者にとっては何度となく耳にしたことのあるお名前でした。“死生学”という概念を学ばせていただいた者として、心より哀悼の誠を捧げたいと思います。
ありがとうございました。
Midnight Walker