74,心理学で読み解くアニメの世界

          心理学で読み解くアニメの世界

              「灰羽連盟

 

 

編集後記

 

全十三話とその考察について投稿を重ねてきましたが、いかがだったでしょうか。最初はとても不思議な雰囲気が感じられたのではないでしょうか。一見すると天使のような姿をしている灰羽達ですが、内情は悩みを抱えた大人になり切れていない子供たちの物語といえるかもしれません。

 

話師という指導者に生きるヒントを与えられながらも、自らの生に苦悩する灰羽達。彼らの悩みや苦しみは、実は私たちが抱えているものと変わりがなく、見ている私たちが同じような気持ちを感じたりします。それが身を切られる様なリアルさにつながっているのではないでしょうか。

 

ラッカは仲間との絆を失ったことで“罪憑き”に苦しみ、やがてその絆を取り戻します。一方レキはこの世界に転生した時からずっと絆を拒み続けています。ラッカが罪憑きから許される過程を目の当たりにしても、自身ではその殻を破ることが出来ませんでした。レキは一人で、さらに孤独感を深めます。

 

第十三話のまとめでも書いたように、ラッカがレキを必要としたように、レキもまたラッカを必要としていたのでしょう。人は人との関わりの中でしか生きられない生き物、ということなのでしょうね。

 

 

ここで物語の最後の場面について少し触れておきたいと思います。ラッカが電源リールを持ってオールドホームの廊下を歩いていると、ある部屋の床に新しい繭を発見します。ラッカが喜んでいると、その横にもう一つ現れます。

 

一つはレキの“生まれ変わり”などと想像できますが、もう一つはどのような新生子なのでしょう。もちろん明確な答えなどはありませんが、レキを見届けたネムがレキの後を追うように巣立ちの日を迎え、二人がいたその場所を占めるように、二つ目の繭が生まれてきたのではないかと想像してしまうのです。ラッカ、カナ、ヒカリが新生子を迎えるというわけです。

 

オールドホームは、この先も多くの新しい灰羽達を迎えることになるのでしょう。きっとそこにはたくましくなったラッカたちがいます。この物語を見終わった時に喜びと悲しみが併存しているのは、成長の先に永遠の別れが潜んでいるからかもしれません。それはあたかも卒業を迎えた子供たちの誇らしい姿を見るような気持と同じなのではないでしょうか。

 

今回の物語は、大人にとっては子供の成長を見るような、また子供たちには等身大の仲間の苦悩を共に体験するような、リアルで痛々しいけれど温かい人間ドラマだったといえるような気がします。今回取り上げた「灰羽連盟」を楽しんでいただけたのなら幸いです。

 

 

さて、コロナの「波」は引き続き一定の水準にあるものの、政府の対応はインフルエンザ並みに緩和されてきたように感じられます。海外からの旅行客に対しても、ほぼ制限の無い渡航が可能となりました(ワクチン接種が必須ですが)。徐々に日本経済が回復しつつあると感じられるところです。

 

このブログでは、心理学的な学びを深めようと、アニメの中にある心理的な葛藤を筆者の視点で取り上げてきたつもりです。当然多くの見落としや、見誤りなどがあるかとは思いますが、一認定心理士の視点として温かく見守っていただけたら幸いです。

 

コロナにより勉強会の開催が出来なくなってから、このブログをはじめました。コロナが落ち着きつつある現在、今後のこのブログの方向性を少し悩んでいるところです。やめるつもりはないのですが、取り上げるトピックスに幅を持たせ、国内外の実写映画も取り上げていけたらと思っています。

 

今後はかなり不定期な投稿になるかもしれませんが、よろしければ時々で結構なのでこちらへ訪ねてきていただければ嬉しく思います。次回以降、アニメに限らず映画も含めて、その時々の作品を適宜取り上げたいと思っております。

 

では、また次回の投稿でお会いしましょう。

 

 

Midnight Walker